> 脊髄梗塞

 脊髄が何らかの原因により虚血となり、脳梗塞と同様に脊髄梗塞を発症し神経障害を生じる疾患です。原因としては、動脈硬化、大動脈疾患(解離性大動脈瘤etc.)、大動脈手術時の血流遮断、脊髄血管奇形、外傷、膠原病、血液凝固異常などの報告がありますが原因不明の脊髄梗塞例も多数存在します。診断は脊髄梗塞に特異的な画像所見がないため困難であり、従来は圧迫性病変・脊髄炎などをMRIを中心とした画像所見や髄液所見で否定し、その後血管領域に一致した症候(前脊髄動脈症候群・後脊髄動脈症候群)であるかを検討して脊髄梗塞と診断されてきました。しかし、最近では、椎体梗塞の所見や拡散強調画像所見から早期診断を試みるようになってきています。
 治療に関しては、残念ながら確立したものはなく、脳梗塞に準じた治療を行っているのが現状です。
 

> 原因不明の脊髄梗塞

<症例 1>
 60代女性。1週間ほど前より腰痛生じていたが様子をみていた。昨日、起床時より下肢のしびれ・歩行障害を自覚するようになり近医受診し投薬治療を受けたが軽快せず、翌日トイレに行った後から両下肢が動かせなくなり救急車で当院受診した。初診時のMRIでは圧迫性病変等有意な所見を認めなかったが、前脊髄動脈症候群の症候を呈していたことから脊髄梗塞の診断で入院した。髄液所見は正常で、入院2日目のMRI拡散強調画像で脊髄内に高信号領域を認め、ADCmapで同部位が低信号となっていることから細胞性浮腫を反映した脊髄梗塞として確定診断した。入院29日目のMRIでは椎体梗塞を疑う所見を認めている。
 治療は、ステロイド・抗血栓療法を早期から行い下肢筋力の改善を認めたが不十分なため(両腸腰筋・四頭筋:MMT 1→3, 前脛骨筋・腓腹筋:MMT 0→2)、リハビリテーション病院へ転院した。

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入院時MRI T1, T2 矢状断像

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入院時MRI diffusion, ADCmap 矢状断像

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入院時MRI T1, T2 水平断像

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入院時MRI diffusion, ADCmap 水平断像

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入院4週後MRI T1, STIR 矢状断像

<症例 2>
 60代女性。朝のラジオ体操後に腰痛生じ、自宅に帰り2階に上がったところで歩行不能になった。翌日、救急車で当院受診、両下肢完全麻痺・膀直障害・麻痺性イレウスを認め、精査の結果、脊髄梗塞の診断で入院した。
 ステロイド・抗血栓療法、リハビリテーション加療を行ったが、麻痺の改善に乏しく (Frankel B1)、リハビリテーション病院へ転院した。

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入院時MRI

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4ヶ月後MRI

<症例 3>
 50代女性。起床時両下肢不全麻痺(改良Frankel C1)・排尿困難となり救急車で当院脳外科に入院した。入院2日目に整形外科紹介、精査の結果、脊髄梗塞と診断し高気圧酸素療法、抗血小板療法を行った。入院6日目に肺動脈血栓症を生じたため、循環器内科にて加療後、リハビリテーション病院へ転院した。
 発症から6ヶ月の経過観察時では、支持なし歩行が可能であり膀胱直腸障害も認めず経過良好である(改良Frankel D3)。

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発症0日MRI

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発症2日MRI

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発症3日CTA

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発症180日MRI

<症例 4>
 80代女性。両下肢麻痺にて救急車で当院受診、脊髄梗塞と診断し入院した。抗血小板療法、リハビリテーション加療を行い、右下肢の筋力はMMT 3〜4、左下肢筋力は1〜2に改善し、車イス移動、平行棒内の歩行が可能となった。

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発症0日MRI

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発症1年5ヶ月MRI

<症例 5>
 22歳女性。2週前より腹部のチクチク感を自覚、2日前より背部痛生じ、前日夜より左下肢の筋力低下、排尿困難となり当院外来を受診した。初診時、下肢筋力は右がMMT 5、左が腸腰筋以下0、明らかな知覚障害は認めなかったが麻痺は進行性で、腰椎MRI矢状断(T2)にて脊髄に高信号変化を認め脊髄梗塞が疑われたため血管造影CTを撮影し他院神経内科へ紹介・転院した。
 その後、脊髄梗塞と確定診断されステロイドパルス療法等行われたが、完全対麻痺、右足背の温痛覚・触覚が軽度残存する状態となり、リハビリテーションセンターへ転院となった。

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初診時MRI

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初診時血管造影CT

> 大動脈解離に伴う脊髄梗塞

<症例>
 60代女性。朝起床時に両下肢麻痺に気づき救急車で当院受診、精査の結果、血栓閉鎖型大動脈解離 (Stanford B型) に伴う脊髄梗塞 (Frankel C1) と診断し入院した。
 血管外科にて保存的加療、リハビリテーションを行ったが、麻痺の改善に乏しく (Frankel C2)、リハビリテーション病院へ転院した。

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入院時MRI

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入院時胸腹部CT

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3D-CTA

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4ヶ月後MRI

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